辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
サリーシャは持っている本の表紙を眺めた。馬を連れて歩く騎士が森の中の湖の川辺に座る精霊の乙女と見つめ合う景色が描かれたそれは、物語冒頭の二人の出会いのシーンだろう。絵の上には本の題名と作者名、書かれた年度が記されている。
六年前と言えば、前アハマス辺境伯夫人は既にこの世を去っている。当時既に二十歳を過ぎていた、しかも男性であるセシリオが読んだとも思えない。
「使用人用に購入したのかしら?」
サリーシャは首をかしげてさらりと本の表紙を撫でた。見下ろしたそれは、まるで新品のように真新しかった。
六年前と言えば、前アハマス辺境伯夫人は既にこの世を去っている。当時既に二十歳を過ぎていた、しかも男性であるセシリオが読んだとも思えない。
「使用人用に購入したのかしら?」
サリーシャは首をかしげてさらりと本の表紙を撫でた。見下ろしたそれは、まるで新品のように真新しかった。