辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
目の前にいるこの人は、サリーシャの今までいたような王都の社交界に放り込まれれば、恐らく女性の扱いがあまり上手くない男性としてレッテルを張られてしまうだろう。けれど、サリーシャにはそれが彼の誠実さを表しているようでかえって好感を覚えた。上っ面だけでない、素を見せてくれている気がしたのだ。
──ああ、この人はとても……
そこまで考えて、サリーシャはフッと笑みを消した。
セシリオがこんな風に接してくれているのに、はたして自分はどうしているのか。未だに背中の傷を隠し通し、素知らぬふりで平然と微笑んでいる。化かし合いはもうたくさん。そう思っていたのに、化かし続けているのはサリーシャの方だ。
「では、また明日。楽しみにしておこう。おやすみ、よい夢を」
セシリオは今日もサリーシャを部屋の前まで送ると、そう言って微笑んだ。ゆっくりと顔が近づき、右頬に柔らかいものが触れる。そして、すっぽりと全身を包むように、抱擁された。
「はい。おやすみなさいませ、閣下」
サリーシャは微笑んでその後ろ姿を見送った。
──ああ、この人はとても……
そこまで考えて、サリーシャはフッと笑みを消した。
セシリオがこんな風に接してくれているのに、はたして自分はどうしているのか。未だに背中の傷を隠し通し、素知らぬふりで平然と微笑んでいる。化かし合いはもうたくさん。そう思っていたのに、化かし続けているのはサリーシャの方だ。
「では、また明日。楽しみにしておこう。おやすみ、よい夢を」
セシリオは今日もサリーシャを部屋の前まで送ると、そう言って微笑んだ。ゆっくりと顔が近づき、右頬に柔らかいものが触れる。そして、すっぽりと全身を包むように、抱擁された。
「はい。おやすみなさいませ、閣下」
サリーシャは微笑んでその後ろ姿を見送った。