辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
◇ ◇ ◇
サリーシャは斜め前に立つセシリオの後ろ姿をまじまじと見つめた。
今日はいつもの深緑色の軍服を着ておらず、真っ白なシャツと黒いズボンを履いている。けれど、その体格のよさから普通の人にはとても見えない。つまりは、衛兵にしか見えない。そのセシリオと小柄な小麦屋の店主が話し込んでいる姿は、さながら職務質問しているかのように見えた。
「──ということは、入荷量は例年より一割ほど少ないということだな?」
「そうだねぇ。今年はほら、あのバクガの幼虫が至る所で付いちまってよ」
「わかった。他のところも同じようなことを言っていた」
「でも、味は変わんねえよ? また買ってくれよ」
「知っている。アハマス領主館にまた届けてくれ」
セシリオの最後の言葉を聞いた小柄な小麦屋の店主はホッとした表情を見せる。品質が落ちて一番の大口顧客であるアハマス領主館から取引量を減らされるのを恐れたのだろう。そして、先ほどからセシリオと話しながらチラリチラリと視線を向けていたサリーシャのことを、上から下まで舐めるようにジロジロと見つめた。
「ところで領主様よ。今日のこの綺麗なお連れさんはどうしたんだい?」
「俺の婚約者だ」
「へえ!」
サリーシャは斜め前に立つセシリオの後ろ姿をまじまじと見つめた。
今日はいつもの深緑色の軍服を着ておらず、真っ白なシャツと黒いズボンを履いている。けれど、その体格のよさから普通の人にはとても見えない。つまりは、衛兵にしか見えない。そのセシリオと小柄な小麦屋の店主が話し込んでいる姿は、さながら職務質問しているかのように見えた。
「──ということは、入荷量は例年より一割ほど少ないということだな?」
「そうだねぇ。今年はほら、あのバクガの幼虫が至る所で付いちまってよ」
「わかった。他のところも同じようなことを言っていた」
「でも、味は変わんねえよ? また買ってくれよ」
「知っている。アハマス領主館にまた届けてくれ」
セシリオの最後の言葉を聞いた小柄な小麦屋の店主はホッとした表情を見せる。品質が落ちて一番の大口顧客であるアハマス領主館から取引量を減らされるのを恐れたのだろう。そして、先ほどからセシリオと話しながらチラリチラリと視線を向けていたサリーシャのことを、上から下まで舐めるようにジロジロと見つめた。
「ところで領主様よ。今日のこの綺麗なお連れさんはどうしたんだい?」
「俺の婚約者だ」
「へえ!」