辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 セシリオは困ったように答えると、沈黙した。
 その様子を見てサリーシャは、もしかしてセシリオが先ほどの小麦屋さんで言われたことを気にしているのかと気づいた。本当にこの人は……と胸がじんわりする。

「閣下。では、侍女達にお土産を買いたいので、お菓子屋さんに連れて行ってくださいませんか。それに、先ほど教えていただいた公園にも行ってみたいです」
「! 菓子屋と公園か。わかった」

 役目を与えられた子供のように笑うその姿を見て、サリーシャは頬を綻ばせた。 

 ***

 教えてもらった公園は、大通り沿いにある大きな公園だった。道に沿った長細い形をしており、中には花壇や芝生広場、噴水などが設えてある。午前中ずっと歩きっぱなしだった二人は芝生の上に腰を下ろすことにした。

「あら、このハンカチ……」

 サリーシャは芝生に敷かれた見覚えのあるハンカチを見て、小さく呟いた。
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