辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
低い声と落ち着いた口調は彼の真摯さを感じさせる。サリーシャはそっとその瑠璃色の瞳を伏せた。
襲ってきたのはとてつもない罪悪感。
「閣下。このハンカチは汚れてしまったから、お返しできませんわ」
サリーシャは少しだけ身体を離し、セシリオを見上げた。セシリオは困惑したように眉を寄せる。
「だから、新しいハンカチに刺繍して差し上げます。午後は裁縫用品店に連れて行ってくださいませ」
サリーシャのおねだりに、セシリオが小さく目を見開く。
今度は『セシリオ』の『C』を刺しゅうしたハンカチをプレゼントしよう。この人についてしまった嘘を、少しでも減らしたいと思った。