辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「いつもありがとうございます」

 と言いながら焼き菓子を受け取った女性がサリーシャの姿に気付き、不思議そうに見つめる。

「閣下。こちらの美しいお方は?」
「俺の婚約者だ。今日、初めて街を案内している」

 サリーシャは横で小さく女性に対して会釈した。それを聞いた女性は「まぁ!」と驚いたように片手を口にあて、戸惑ったような表情を見せた。

「このようなむさ苦しい場所にお連れして大丈夫ですか?」

 心配そうな女性の声に、セシリオがこちらを向く。サリーシャはにこりと笑って大丈夫だと伝えた。

「こんなに可愛いらしい方がアハマス閣下に嫁がれるなんて、今から楽しみですわ」

 その女性は、サリーシャのことを見つめて嬉しそうに微笑んだ。帰り際、サリーシャがその白い建物を振り返ると、先ほどの女性が入り口でこちらに頭を下げているのが見えた。
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