辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「はい、とても美味しかったですわ。今日はいかがでした?」
「すごく楽しかったわ。午前中はセシリオ様の用事に付き合って小麦屋さん巡りをしたの。小麦屋さんって面白いのね。わたくし、ちっとも知らなかったわ。色々なひきかたがあって、小麦粉にも種類が沢山あるのよ? それから、芝生の広がる公園に行ったわ。座って色々お喋りをしたのよ」
サリーシャは今日の昼間のことを思い返す。けれど、お喋りの内容はなんだか特別なことのような気がして、秘密にしておいた。
「あとは、裁縫用品店に行ってセシリオ様にプレゼントするハンカチを買ったの。あとはね──」
夢中になってお喋りをするサリーシャを見て、ノーラは目を丸くして動かしていた手を止めた。そして、堪えきれないようにクスクスと笑いだした。
「なあに? ノーラ、どうかして?」
「いいえ。こんなに楽しそうに話すサリーシャ様を見るのは久しぶりだと思いまして」
ノーラは口元に手を当てて、嬉しそうに微笑む。