政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「コップ片づけてくる」

 一方的に言ってふたつのカップを手にして立ち上がった航君。

「もうやめてください……っ!」

 気づいたら立ち上がり、キッチンへ向かう彼の背中に向かって叫んでいた。

「……千波?」

 びっくりして足を止め、振り返り私を見た彼に思いをぶつけた。

「私たちは、お互いの利害が一致したから結婚したに過ぎない関係ですよね? それなのに、どうして航君は必要以上に私に優しくするんですか?」

 結婚して子供を産んでくれればそれでいいんでしょ? 私たちは普通の結婚ではないはず。

「プロポーズに誕生日プレゼントまで用意してくれて、さっきみたいに私の心を惑わすようなことばかり言って、航君は私とどうなりたいんですか?」

 こんなこと聞きたくなかった。だってこれでは私は航君のことが好きだと言っているようなものだもの。

 彼にその気がなかったら、迷惑以外のなにものでもない。もしかしたら今までのように接してくれなくなるかもしれないとわかっていながら、止めることはできなかった。

 その気がないならもう優しくしないで。ただの契約の関係でいいならそう接してほしい。でも、もし少しでも私と同じ気持ちでいてくれているなら聞かせてほしい。
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