政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「教えてください」

 なにも言わない航君に痺れを切らせば、茫然と立ち尽くしていた彼はコップをキッチンのカウンターに置いた。

 無言のまま真っ直ぐに近づいてくる航君はどこか怒っているようにも見えて、一瞬怯みそうになるもすぐに自分を奮い立たせた。

 ここで怖気づいてうやむやにしたら後悔する。その思いでジッと彼を見つめ返した。

 航君は目の前で足を止めると、私の気持ちを探るような目を向けてきた。

どれくらいの時間、お互いなにも言わずに見つめ合っていただろうか。先に口を開いたのは航君だった。

「俺がどんな気持ちで千波に接していたか、本当にわからない?」

「……はい」

 わからないよ。航君の気持ちが全然わからない。

 すると航君は悔しそうに顔を歪めた。

「プロポーズに誕生日プレゼントまで渡して、千波とどうなりたいかって? そんなの、千波に俺を好きになってほしいからに決まってるだろ?」

「……えっ」

 航君、私に好きになってほしいって言った? それとも私の聞き間違い?

 すぐには信じられない話に言葉が続かない。
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