政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 でも彼の言う通り、まだ出会って一ヵ月しか経っていないのに、私は航君に強く惹かれてしまった。

 それなのに航君の気持ちを疑うのは矛盾している気がする。好きになるのに一緒に過ごした時間は関係ない。

 だったら航君も私と同じ気持ちなのだと、信じてもいいのかな。

「自惚れてもいいですって言ったら、迷惑ですか?」

 その思いが強くなり一方でまだ自信が持てず、曖昧な言葉しか出てこない。

 だけどこれだけで私の気持ちは届いたのか、航君は嬉しそう頬を緩めた。

「迷惑に思うわけがないだろう? 俺はずっと千波に好かれたいと望んでいたのだから。……今、夢のように嬉しくてたまらない」

 甘い言葉を囁いた瞬間、航君は思いっきり私の身体を抱きしめた。

「こ、航君?」

 苦しいほどの抱擁、ぬくもり、言葉に今が現実なのだと実感していく。

 嬉しくて私も彼の背中に手を回せば、隙間がないほどまた航君は強く抱きしめた。

「好きだよ、千波」

 愛の言葉を囁かれ、胸がきゅんとなる。

「私も好きです」

 たまらず初めて「好き」の二文字を口にした瞬間、航君は勢いよく私の身体を離した。

 顔を上げると、まじまじと私を見つめる彼と目が合う。

「もう一度言ってくれ」

「えっ?」

「俺のこと好きだって言ってほしい」
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