政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「千波のことが好きなんだから当然の欲求だ。できるなら一日中こうやって千波に触れていたい」

「……っ」

 普通の夫婦はどうなのかわからないけれど、こんなにも愛されていると実感できる私は間違いなく幸せだと思う。

 本当ならこのまま流されてしまいところだけど、そうはいかない。

「航君、そろそろ起きないと迎えが来てしまいますよ」

 彼専用の運転手がおり、朝の迎えはもちろんのこと、帰りも送り届けてくれている。

 少し突き離した言い方をしたら、航君は目を丸くさせた後、表情を崩した。

「なんで笑うんですか?」

「ごめん。さっきの千波、奥さんって感じがしてグッときたんだ」

 ギューッと抱きしめて、航君は私の首筋や耳朶、頬に次々とキスを落とす。

「こ、航君! 本当に間に合わなくなってしまいますよ?」

「ん、わかってる」

 口ではそう言っているのに、行動が伴っていない。だけどしっかりと拒むことができない私も同じだ。

 様々な場所にキスしていても、決して唇には触れてくれないもどかしさに焦らされていく。

 頭ではだめだとわかっているけれど、キスしてほしい――。思わずそんな言葉をついて出そうになった時、ベッド脇のテーブルに置いてあった航君のスマホが鳴った。その音に我に返る。
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