政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「航君、電話が……」

「あぁ、そうだな」

 不機嫌そうに言って航君は私を解放し、ゆっくりと起き上がる。そして電話の相手を確認すると深いため息を漏らすと、私にごめんのポーズをしてベッドから降りた。

「大丈夫、ちゃんと起きてるから」

 電話に出るなりそう言って彼は仕事の話をし始める。

 私がいたら邪魔になると思い、急いでベッドから降りて廊下に出た。朝ごはんの準備をしにキッチンへ向かう間も、まだ胸の高鳴りは収まらない。

「顔も熱い」

 両頬に触れれば熱を帯びていて、鏡を見なくても顔が赤いのがわかる。

 なんかもう最近の私、すごくふしだらな気がする。さっきだってキスしてほしいって思ったよね? あやうく航君に言ってしまうところだった。

「気をつけないと」

 はしたないって思われて嫌われたくない。気持ちを引き締めて朝食の準備に取りかかる。温め直した料理をテーブルに運んでいると、自分のスマホが鳴った。

 こんな朝早くに電話ってことは、もしかして瑠璃のこと?

 手にしていた皿を急いでテーブルに乗せてスマホを見れば、やはり国際番号が映っていた。伯母からだ。

 定期的に伯母から瑠璃のことで連絡をもらっていたけれど、それは時差を考慮していつもこっちが夜の忙しくない時間帯だった。

 こうして朝にかかってくることは初めてで緊張がはしる。
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