政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 私と隣に座る航君に、真向かいに座る神屋敷さんは常に笑顔を貫いている。それが返って不気味に感じてしまう。

 家族連れが多いフードコートで私たちは、かなり浮いた存在でさっきから視線を感じていた。
なにか話を切り出したくてもできずにいる中、沈黙の時が流れる。それぞれが珈琲を一口飲んだ時、航君のスマホが鳴った。

 電話の相手を確認した彼は顔を渋める。だけど電話に出ることなく鳴り続けているスマホをポケットにしまう。

「航さん、お電話に出なくてよろしいんですか?」

「大丈夫だ」

 航君はそう言うけど、本当に大丈夫なのかな。きっと仕事の電話だろうし、今も着信音が鳴り続けている。急ぎの用件なのかもしれない。

「私と千波さんのことならご心配なさらないで。ここじゃ騒がしいでしょうし、静かなところでお電話に出てきたほうがよろしいと思いますよ」

「しかし……」

 チラッと私を見る航君。
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