政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 間違いなく電話は仕事のことなんだろう。でも私のことが心配で出られないんだ。

 それを理解すると私は彼を安心させるように笑顔で言った。

「私なら大丈夫ですから、電話に出てきてください」

「千波さんもこう言っていますし、私たちにお構いなくどうぞ」

 神屋敷さんにも言われ、航君は「すぐに戻る」と言って何度か振り返りながら見えなくなっていった。途端に神屋敷さんから笑顔が消えた。

「やっとふたりになれましたね。家の者にあなたたちを尾行させ、タイミングを見計らって航さんに仕事の電話をさせたかいがありました」

「えっ?」

 神屋敷さんと会ったのも、航君に電話がかかってきたのも偶然じゃないってこと? そこまでして私とふたりっきりになりたかったのは、間違いなく航君のことで話したいことがあるからだよね?

 そこに考えが行き着くと、なにを言われるのかと緊張が増す中、神屋敷さんは不快感を露わにした。

「この前警告したにもかかわらず、まさか航さんとすでに入籍していただなんて……。航さんのご両親が反対なさっていたのに信じられないわ」

 深いため息を漏らして神屋敷さんは続ける。

「忘れないで。航さんのご両親は結婚に反対なさっているってことを。おふたりはあなたとより、私と結婚してほしいとおっしゃってくださったの」

「えっ……」
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