政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「そうだ、私これから検査があるんだった。だから先に戻っているね」

「じゃあ送っていくよ」

「車椅子に私が何年乗っていると思っているの? ひとりで戻れるから大丈夫! お姉ちゃんはお義兄さんとゆっくりしてきて」

 そう言って瑠璃は自走しながら病室を出て行った。

「悪かったな、瑠璃ちゃんに気を遣わせて」

「はい」

 なんとなく気まずくなって、沈黙の時が流れる。少し経つと、航君は私に向かって両手を広げた。

「おいで、千波」

 胸がきゅんとなりながら、私は迷うことなくそっと彼に抱きついた。彼のぬくもりに包まれ、胸の鼓動を聞いていると心から安心できた。

「背中痛くないですか?」

 刺されたのはたしか右側だった気がする。

「それほど傷は深くなかったから大丈夫だ。ただ、一週間ほど入院が必要なようだけど」

「当たり前ですよ」

 だって刃物で刺されたんだもの。早く退院できるわけがない。
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