政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「神屋敷のことで瑠璃には嫌な思いをたくさんさせて悪かった。俺がもっと早くに対処していれば、こんなことにならなかったはずだ」

「そんな……! 航君は悪くありません」

「いや、俺のせいだ。神屋敷の俺に対する執着は尋常じゃなかった。でもさすがにあそこまでするとは思わなかった俺の考えの甘さのせいだ」

 後悔の言葉を口にする航君に慌てて言ったものの、彼は自分を責め続ける。

「でもきっと神屋敷さんはわかってくれたと思います」

 航君を刺した後の神屋敷さんは後悔しているようだったもの。きっと自分が起こしたことを悔いてくれていると信じたい。

「そうだといいけど、な。……今回の事件は大きく報道されるだろうし、神屋敷ホテルは厳しい現実を突きつけられるだろう。親子ともども、一からやり直してほしい」

「そう、ですね」

 正直に言えば神屋敷さんのことも、彼女に頼まれて旧知の仲だった父を騙した神屋敷ホテルの社長も許すことはできない。

 だけどきっと母が生きていたら、いつまでも私が恨みを抱いていることに賛成はしないだろう。

 父だってそうだ。私にこんな思いをさせたくないから私と瑠璃の前から姿を消したのかもしれない。ふたりはとても優しい人だったから。
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