政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「ですがひとつ、千波の父親として聞かせていただきたいことがあります。……千波のことを心から愛しているから結婚を望み、千波の力になってくださったんですよね?」

 どこか疑いめいた目で庵野さんの様子を窺う伯父に、ドキッとなる。

 そうだよね、お見合いをしてすぐに結婚を決めたんだもの、なにかあると疑われて当然だ。それもこっちにとったら好条件過ぎる。

 母は伯父に父の家に代々受け継がれてきた、庵野家との関係を話していなかった。そもそも伯父が知っていたら、庵野さんとの見合いの話も持ってこなかっただろう。

 母も心のどこかでもう迷信みたいな話だと思っていたのかもしれない。それでも確固たる証拠がないから、幼い頃から私に口を酸っぱくして結婚は好きな人としなさいと言っていたんだと思う。

 母が生きていたら、どう感じ、私にどんな言葉をかけてくれるだろう。

「もちろんです」

 ふと母のことが頭をよぎったものの、庵野さんの力強い声にすぐに現実に引き戻された。

「見合いを申し入れた時もご説明させていただきましたが、千波さんのことを愛しているから結婚を望みました。彼女が隣で幸せそうに笑ってくれることが、私の幸せでもあります。そのためなら今後もいくらでも力になるつもりです」
< 36 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop