政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 だけどもし、本気で庵野さんのことを好きになってしまったら? 彼は私と結婚して子供を産ませたい。でもその先はどう考えているのだろう。子供を産んでも、私との結婚生活を続けるつもりでいるのか、それとも子供さえ産まれれば私は用済みになってしまう?

 様々な考えが頭をよぎっては不安な気持ちに悩まされる。

「どうした?」

「えっ?」

 声をかけてくれた庵野さんは、心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「どこか体調でも悪いのか?」

 そっと彼の手が私の頬に触れ、心臓が飛び跳ねた。恥ずかしくてすぐに彼に手を退かしてほしい衝動に駆られるけど、それをしたら伯父と伯母が変に思うはず。

 高鳴る胸の鼓動を必死に抑えて声を絞り出す。

「だ、大丈夫です」

 だから早く手を退けてほしい。その一心で彼を見つめるものの、なかなか私の頬から離れてくれない。

「本当に? 顔が熱いようだけど、熱があるんじゃないか?」

 それは庵野さんが触れているからです!とは言えず、口をパクパクさせてしまう。

「あらあら、仲が良いのね。フフ、千波ちゃんは私たちが見ているから恥ずかしいんだと思いますよ」

「えっ? 恥ずかしい?」

 庵野さんは思いもよらなかったようで、私と伯母を交互に見る。
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