政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
「ふたりの仲睦まじい様子を見ている私たちも、ちょっぴり照れくさいわ。ねぇ、あなた」
 
伯母に話を振られ、伯父はわざとらしく咳払いをした。

「まぁ、それはあるな」

 伯父と伯母に言われてやっと理解してくれたのか、庵野さんは気まずそうに私の頬から手を離した。

「すまない」

「い、いいえ」

 恥ずかしすぎて庵野さんの顔がまともに見られない。

 それからしばらくの間、伯母は私と庵野さんは見ては嬉しそうに生温かい眼差しを向け続けた。


 ちょうど庵野さんに仕事の電話が入り、私たちは二時間ほどで伯父の家を後にした。電話がなければ、夕食を一緒に食べようと誘われかねなかったから助かった。長い時間一緒にいて、ボロが出たら大変だったもの。

だけど無事に挨拶を終え、少し肩の荷が下りた。なにより伯父と伯母を安心させることができたことが嬉しい。

 そう思えるのはすべて庵野さんのおかげだ。

「今日は本当にありがとうございました」

 運転中の庵野さんに感謝の思いを伝えた。

 最初から彼は完璧だった。ふたりが喜ぶ手土産を持参し、まるで本当に私を愛しているかのような言葉を言ってくれたのだから。

「いや、当然のことをしたまでだ。その代わりといってはあれだが、明日はよろしく頼むよ」

「はい、もちろんです」

 今日は私のところ、そして明日は彼の実家に挨拶に行くことになっている。
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