政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 普通は一回でこんなに付けるものなの? なにもかもが初めての経験でわからない。こんな時に聞ける友達がいたらいいけど、大学を中退してからみんなとは疎遠になっちゃっているし。

 身体を洗って湯船に浸かると、なぜかホッとする。だけどそれと同時に嫌でも昨夜の情事が頭をよぎった。

「幸せな時間だったな」

 それが率直な感想だった。たしかに聞いていた通りに痛かった。でもその分、航君がすごく優しく触れてくれて、何度も私を気遣ってくれた。

 まるで愛されていると錯覚してしまうほど、幸せな気持ちでいっぱいになったもの。
 初めての相手が航君で本当によかった。

「だめだ、そろそろ出よう」

 航君のことを考えていたら逆上せそう。

 用意してもらった服に着替えて部屋へ戻ると、仕事が終わったようで航君は珈琲を飲みながら新聞を読んでいた。

「朝食用意してもらったんだ。食べられるか?」

「はい、いただきます」

 向かい側の席に座ると、航君が珈琲を注いでくれた。

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

 何気ないやり取りだけれど、少しだけ航君の纏う空気が柔らかいものになった気がするのは、私の気のせいだろうか。
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