私は天使に侵されている
それから夕食を杉宮が調理しに来て、豪華な食事が並ぶ。
「凄い……これ、杉宮さんが?」
「はい、お口に合えばいいんですが……」

「食べよ?美麗」
「うん!いただきます!
…………んー、美味しい!!」
「フフ…良かったです。お口に合って」
「杉宮さんって凄いですね。何でも器用にこなして……!」
穏やかに微笑む杉宮と、フワッと笑う美麗。

「美麗」
ダイニングテーブルに向かい合って座っている来夢と美麗。
美麗と杉宮の雰囲気に、言葉にならない嫉妬を覚える。

「ん?来夢くん?」
「僕を見て?」
「え?」
「“僕を”見て!」
「う、うん…」
「言ったよね?
“僕だけ”に集中して!」

来夢の手が美麗の目に伸びてくる。
「この目は、僕だけを見る為にあるんだよ」

そしてそのまま左耳に移動する。
「この耳は、僕だけの声を聞く為に……」
「来夢…く━━━━」
そして右耳に光るピアスに移動して、
「このピアスは、美麗が僕のモノだって証」

そして口唇に移動して、数回なぞり言った。
「この口は、僕の名前を呼んでキスをする為に存在してるんだよ?
ねっ!
もう…美麗は、僕のモノでしか存在できないでしょ?」

「来夢くん?」
「美麗、言って?」
「え?」
「私は、来夢のモノ」
「え?」
「早く言って?
僕を安心させて?
“私は、来夢のモノ”
はい、言って?」

来夢の雰囲気、声のトーン、真っ直ぐ見る鋭い視線……
まるで催眠術のようだった。

「私は、来夢のモノ……」
「フフ…良くできました!」
そう言った来夢は、立ち上がり美麗の元に移動して美麗を抱き上げた。
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