私は天使に侵されている
震えている美麗をバイクに乗せた来夢。
そしてヘルメットをかぶせた。
「美麗、職場には杉宮がうまく話してくれるからね!
もう、帰ろ?」
優しく微笑み、頭を撫でながら言った来夢。

「あの…来夢」
「ん?」
来夢の服を少し握り、見上げた美麗。

「私、来夢から離れないから、もう…あんなことやめてね…お友達を傷つけるようなこと」
「ほんと?僕から離れない?」
「うん、だから…もうあんなこと……」
「わかった~!」

美麗はとにかく怖かった。
これ以上…あんな残酷な行為を見たくなくて必死だった。

来夢は“天使”だと思っていた。
どうして来夢は、天使と“悪魔”なんだろうと不思議だった……

“今にわかると思うよ”
と言っていた来夢。

それがわかったような気がした。

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マンションに帰りつき、一緒に風呂に入っている二人。浴槽に並んで浸かっている。
「来夢って…」
「ん?」
「とっても力が強いんだね…」
「ん?」
「令子ちゃんがあんなに吹っ飛ぶなんて……」
「んー令子は女だから。
男には力で勝てないよ」

「私ね、勝手に思ってた」
「ん?」
「来夢は“天使”
“悪魔”なんてあり得ないって……」
「刺青の通りでしょ?」
「え?あ…うん……」
「だから言ったでしょ?
“今にわかるよ”って」
「うん……」

「美麗…震えてる……寒い?
おかしいなぁ…温度熱めにしてるのに」
そう。
熱めのお湯に浸かってるのに、美麗は震えていた。

目の前にいる可愛い顔をした天使は、とても恐ろしい悪魔だった。

正直……“逃げたい”と思っていた。

でも美麗が離れるようなことがあれば、きっと想像のつかない恐ろしいことになるだろう。

とにかく、来夢の傍を離れずに怒らせないようにしなければ……
美麗は一人……心の中で誓ったのだった。
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