私は天使に侵されている
「………」
来夢はずっと二人を見据え、あくまで冷静に話している。
健悟と春作は、来夢の真っ直ぐな視線に何も言えなくなる。

「純粋っていうのは、美麗みたいな人を言うんだよ。
あんな酷いことされたのに、もうお友達を傷つけないでって一生懸命僕に訴えてたんだよ?」
「………」
「令子が惚れてたのは、僕じゃなくて“夢野”って言う名前だよ。要はお金が好きなんだよ!
夢野 来夢の彼女っていう、ステータス。
僕の彼女っていうだけで、かなりの優遇があるから。
セレブになれて、周りから持て囃される。
そうゆうのが、目的だったんだよ!
じゃなかったら、嘘ついてまでそんな風に振る舞わないでしょ?
この前なんか嘘泣きまでして僕に懇願して、この僕がそんなので騙されると思ってたのかな?
バカにするのもいい加減にしてほしいよ!」
「そう、かも……しれないな…」
健悟が静かに、呟いた。
春作も何も言い返せず、俯いている。

「春作」
「え━━━━━
うがっ…!!!」
今度は春作が来夢に胸ぐらを掴まれていた。

「僕は悲しいよ……」
「うぅ…来夢…やめ……」
「健悟と春作のことは、ちゃんと親友だと思ってたんだよ?でもまさか、この僕の胸ぐらを掴むなんて……
ダメだよ?
二人は、僕に、勝てないんだから……!
ちゃんと僕には忠実でいなきゃ…!」
片手で胸ぐらを掴み、更に持ち上げた。
春作の首が絞まっていく。

「うぅ……」
「苦しい?
僕はもっと苦しかったなぁ。
僕の美麗を傷つけたアレ(令子)の肩を持つなんて……
春作も排除しなきゃね。
僕の美麗に悪影響だもん。
美麗を傷つけるモノは“全て”消さなきゃ……!」

来瞳以外の人間を見下している来夢。
来瞳から寵愛されて育ったせいで、口答え…ましてや胸ぐらを掴まれることなど皆無なのだ。
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