私は天使に侵されている

来夢は片手で春作の首を持ち上げ続け、春作は失神した。
そこでパッと手を離した来夢。

バサッと春作が地面に落ち、倒れた。

｢春作！？｣
｢気絶してるだけだよ。今、杉宮呼ぶから｣
｢来夢、こんなこともう…やめてくれ！｣
春作に跪き、来夢を見上げて言った健悟。

｢………だったら｣

｢来、夢…？｣
健悟の目が開かれる。

｢僕を挑発するようなことしないで。
口答えしないで。
ましてや、胸ぐらを掴むなんてあり得ないよ！
健悟。
わかるよね？｣
健悟と春作を見下すように見ている来夢。
その雰囲気は“悪魔”その物だった。

｢あ、あぁ…わかってるよ……｣
健悟はこれ以上来夢を見ていられなくて、目を反らし俯いた。


春作が杉宮に連れていかれた後、来夢と健悟は講義に出ていた。
｢二人になっちゃったね…｣
｢あぁ…｣
｢健悟は“間違わない”でね？｣
｢わかってる。
俺は春作と令子とは、ちょっと違うから…｣
｢そうだね｣
｢お前の親父さんのお陰で、生きているようなモノだからな｣
｢パパも、おじさんのことは信頼してるみたいだよ。
おじさんはパパに忠実だもんね！
健悟も見習わなきゃ！｣

健悟の父親は、来瞳の忠実な秘書だ。
そして健悟家族は、来夢の実家(夢野の屋敷)の敷地内にある離れで暮らしている。
なので健悟は、小学生の時から来夢に逆らえない。

｢来夢、昼飯どうする？
美麗ちゃんのとこ？それとも学食？｣
｢んー、美麗のとこって言いたいけど、今日はバタバタで相手できないって言われたんだよね……｣
｢じゃあ、学食だな。
行こうぜ！｣