私は天使に侵されている
「他に言うことないの?
君達、バカなの?
バカの一つ覚えみたいに“ごめんなさい”って」
スッと立ち上がり、真っ直ぐ草野達の元へ歩み寄る来夢。

そして草野達の前に、しゃがみこんだ。
「許さないよ」
「え……」
「許されると思ってる?」
「来夢様…」
「あの時の美麗、僕に“別れよう”って言おうとしてたんだよね?君達に言われて。
そんなの僕にとっては“死ね”って、言われてるようなもんなんだよ?
だから………」

「ぎやぁぁぁーーーー!!」
来夢が煙草を草野の手に押しつけた。
「死んでね!」

健悟達は、とてもじゃないが見ていられなかった。
目の前の残忍な仕打ち。
草野達三人、来夢に煙草を押しつけられぼろぼろだ。

しかももっと恐ろしいのは、来夢自身は楽しそうだということ。

来夢は人間ではないのかと思わせる程の、惨い行為。
かといって、止めに入れる勇気もない。
あまりにも恐ろし過ぎて、身体が動かないのだ。

草野達はとっくに気絶しているのに、来夢はまるでおもちゃで遊んでいる子どものように、草野達をいたぶり続けた。

散々いたぶり、飽きた様子の来夢。
スマホを取りだし、杉宮に電話をかけた。
数分後杉宮が現れ、草野達を運んで行ったのだった。

「あー楽しかったぁ~!
美麗は、もう仕事終わったかなぁ?」
今度は美麗に電話をかけ始めた来夢。
「…………
出ない……まだ終わってないかぁ…」
繋がらなかったようで、肩を落としている。

「来夢」
「んー?なぁに、健悟」
「あんなこと…もう…やめろよ!」

「はぁー、だから言ったよね?何度も言わせないで!
僕を怒らせるようなことしなければ、あんなことしないって。
美麗を僕から放す、美麗を傷つける、僕に口答えする。いい?みんなも、僕には忠実でいて!
わかった?」
来夢はため息をつき、言い放った。

「「「わかった…」」」
健悟達は、怯えながらも大きく頷いたのだった。
< 53 / 66 >

この作品をシェア

pagetop