制服の下(に何があるのか考えた結果)

第26話 今日其捌

一睡もせず朝を迎える
何を話した訳でもなかった
何も離したくなかった
二人ただ 互いの形をなぞる

白んでいく世界を
止める事なんてできるはずもなく
明るくなっていく部屋に
二人ただ 互いの胸の内を掴む

完全なる朝は過ぎ去り
隣の家にトラックの止まった音
「もう行くのか?」
「あれとは別にタクシーでいく」

ホッとしたような
そうでないような
だが確実に
残された時間は短い

過ぎ去っていくトラックの音
引き裂かれる今日までの二人
たった4か月
短い手紙から始まった

「瓜生、最後のわがままだけど」
最後なんて言うなよ
空木は立ち上がり
隣の隣の部屋へ行った

クリーニングの袋に入ったままの
制服を 俺の制服の隣にかけた
「ぼくの制服ここに置いていくから」
本当にこいつはいつもいきなりだな

俺も立ち上がる
「泣かないで瓜生」
ああ、また俺は泣いているのか
「永遠の別れじゃないって誓うから」

そう言って抱きしめられる
(きし)む背骨
音を立てるくちびる
(あわ)れむ鼓動

二つのラストノートが
ドアを開けて
階段を下り
玄関にたどり着く

その一つだけが
玄関の向こうへ移動する
ほんの少しの光を残して
制服の下に誓いを立てて
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