無彩色なキミに恋をして。

とは言え、呼び出したのはわたしだし
何を言われるのかなって内心ビクビクしているけれど、伝えたい事もあるから『ふぅー…』と一呼吸置いてから、話を切り出した。

「燈冴くんとの事で
 先日、元宮さんから言われた件ですが…」

すると彼女は一瞬、ピクリと眉を動かして反応。
グラスを持つ手を離し、ゆっくりと顔を上げたその目はとても不愉快そう。

“燈冴くんの件”

それだけでも言いたい事は伝わっているような表情。


「わたしはーーー」

「ご、ごめんなさい!!」

”呆気にとられる”って、こういう事なのか。

まだ『わたしは…』しか言っていないのに
すかさず言葉を遮り深々と頭を下げられたから
最後まで言えなくなってしまった。

「どうして元宮さんが謝るの…?」

「だってそれは…」

やっぱり言いづらいのか
視線を外す彼女からは焦りの色が見える。

「漣さんに私は
 とても酷いことを言ってしまったから…」

「え…?」

それはまさかの…謝罪?
しゅんと肩を落とす彼女の姿は
わたしに言い張ったあの勢いとは全く違っていて
叱られた子犬みたいに小さくなっている。

でも急にどうして…?

「どうしてごめんだなんて…」

「それは…
 あの後、真白さんと会って…」

わたしが知りたかった
燈冴くんがこの人と会った理由――――

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