無彩色なキミに恋をして。
「緋奈星さん
今誰かの事を考えてた?」
「えッ!?」
信号が赤になり車が停車したかと思えば
鮎沢さんはわたしの方を向いて急に心を読むものだから、反射的に動揺した。
「あれ。もしかして図星?」
『言ってみただけなんだけどね』って軽薄に含み笑い…
「試したんですね」
「そんな人聞きの悪い。
緋奈星さんが《《そういう顔》》してたんだよ」
正直ムカつくって思うけれど
当たっているだけに怒ることも
それどころか簡単に見抜かれたのが情けなくて
自分に1番、腹が立つ…
「…アナタの仰るとおりです。
好きな人の事を…考えていました」
信号が青に変わり
運転を再開した彼に躊躇い気味に本音をぶつけた。
「ふーん、そっか。
同じ会社の人?」
「…そこまで言う必要はないと思います」
「厳しいねぇ。
それくらい良いのに。」
『強情だなぁ』と
また馬鹿にしたような言い方。
この人のこういう所、好きじゃない。
「とにかくそういう事なので
婚約なんてしません」
「んー…それはどうかな。
僕達には決定権はないと思うし」
「そんな事ないはず!」
ついムキになって
シートベルトが少し伸びるくらい前のめりに否定してしまった。
それには彼も一瞬ピクリと顔色を変えたけれど
あくまで冷静に言う。
「僕や緋奈星さんの立場って
そんな簡単にはいかないんだよ」