無彩色なキミに恋をして。

『好きじゃない相手と結婚させられる事は可哀想だと思うけど、諦めた方がいいと思う』


冷たく言い放つ彼の横顔は
無気力に感情が篭ってない。
”もう完全に諦めてる”って感じに思えたのは気のせい…?


「さて、着いたよ」

話している間に
車は会社の正面入口に横づけするように停まった。

よくも知らない鮎沢さん(相手)の車の窓から見る景色に、燈冴くんが送迎してくれていた面影を重ねて思い出されるのが…皮肉。

「帰りにまた迎えに来るから
 仕事が終わったら連絡してね?」

わたしを降ろすなり助手席側の窓を開けてそう一言呟き、彼はそのまま地下駐車場へと車を走らせていった。

「連絡なんて、するわけないじゃん…」

そんな約束
する必要もないんだから。



鮎沢さんが会社まで送ってくれたせいで
車から降りるところを数人の女性社員に見られたらしく、噂の火種となって瞬く間に広まった。

自部署では睨まれるはコソコソ言われるはで
殺気感じる(よど)んだ空気に放り投げられて気持ちが沈むし…
余計に鮎沢さん(あの人)を恨みたくなる。


けれど悪夢はそれだけじゃなかった。


「緋奈星さん?」

お昼少し前
社長()に呼ばれ社長室へのエレベーターを待ってると、背後から声を掛けられた。

「どーも、今朝ぶりです」

呼んだ相手を見て愕然とした。
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