無彩色なキミに恋をして。
それが燈冴くんの隠れた部分で
そこがまた皆にとっては魅力みたい―――
「燈冴くん、少し良いか?
仕事の話だ」
「あ、はい。
今伺います」
他愛もない話をしていたけれど
父が他社の社長達を引き連れて燈冴くんを呼び出した。
こういう時の呼び出しは込み入った”金銭”の相談。
高額な値で売買されるから秘書である燈冴くんも仲介しないといけない。
だから娘のわたしは蚊帳の外。
「緋奈星さま。
私が戻るまで、あまりウロウロなさらないでくださいね?」
「はいはい、わかってますよ。
しっかり頑張ります」
去り際の燈冴んくんの一言に軽めに返事して
その後ろ姿を見送った。
…とは言ったものの
2人が席を外してしまっては
この場を仕切らないといけないのはわたしだけ。
なかなかの重役を押し付けられたわけで…
『お嬢様、ぜひこちらでお話を』
『そのネックレスをもっと近くで』などと誘いがバンバン来るし、それぞれの輪に入れば食事やらお酒やらを提供してくれて断るわけにもいかず、つい承諾してしまう。
まぁそんなのが続けば…
「ぎもぢわるい…」
食べ過ぎ・飲みすぎの罰が当たったのと
人の多さにヤられてしまったのかもしれないな。
まわりに気付かれないよう苦笑で乗り切り
会場の隅へと戦線離脱を余儀なくされた。