無彩色なキミに恋をして。

なぜ鮎沢さんがこんなところに?

疑問が解決する間もなく
悪いタイミングでエレベーターが到着。
必然的に同乗するしかなくなって
彼に『先どうぞ』と促されるまま乗り込む羽目に。

「どちらまで行きます?」

「…社長室です…」

「奇遇だね。
 僕もなんだよ」

「…そうですか」

さらりと流すわたしの横で
扉の近くにいる彼が行き先ボタンを押すしてくれる。

よりによって目的地が一緒とか…最悪だな。

表示灯の数字を見つめながら早く着く事を祈っていたけど、庫内の無言が妙に落ち着かなくて
場の空気を紛らわす為にさっき思った疑問を彼に聞く事にした。

「今日はどうしてこの会社に?
 何か用事があったんですか?」

「そうだね。
 すぐにわかると思うよ」

「…そう、ですか」


・・・で、え?会話終了…?

その返事だけで結局無言に戻ってしまい
しーんと静まり返るなか少しして目的地で停止。
閉塞的な場所で2人きりの気まずい状況から無事(?)脱出する事ができた。

「社長、失礼します」

コンコンと社長室をノックする鮎沢さんの横で
別にわたしは後から入っても良かったのでは?と
なんか少し不服に同席。

「なんだ、緋奈星も一緒か」

なんだって…
呼んだのは自分なのに。

「まぁちょうど良いか。
 そこに座りなさい」

言われるままわたしはソファに腰掛けた。


< 140 / 232 >

この作品をシェア

pagetop