無彩色なキミに恋をして。

座るのはわたしだけで
鮎沢さんは、なぜか父の隣に立っている。

そのポジションは
いつも燈冴くんの立ち位置…

まさか…だよね?


「話って…何?」

本当なら単刀直入に詰め寄りたいところ。
だけど鮎沢さんの手前、先に要件を聞いてからじゃないと大人気ない気がして、わたしはなんとか冷静を装った。

「鮎沢くんだが
 今日からしばらく私と仕事をする事になった」

「仕事をする…?
 って…どういう事?」

「2人が結婚すれば、いずれは跡を継ぐ事になる。
 今のうちから少しずつ勉強してもらうんだ」

「え…」

想像していた答えではなかったけれど
驚いた事には変わりない。
ううん、驚くってレベルじゃない。
受けた衝撃は計り知れない。
ショックの方が大きくて、頭が真っ白になった。

本当は、わたしが聞きたかったのは
『燈冴くんの代わりに鮎沢さんが秘書になるのか』って事。
だから彼は父の隣にいるのかなって…


でもそうじゃなかった。

それ以上にもう“後継者”の将来を見据えているなんて…

「わたしはまだ婚約を受け入れたわけじゃないよ。
 勝手に進めないで。」

本人を前にして言う事でもないけれど
知らないところで話が進んでいて
結果だけ伝えられるなんて冗談じゃない。

その怒りみたいなものが
思わず言葉となった。
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