無彩色なキミに恋をして。

わたしの思いなんてそう簡単に父に伝わるはずもなく、話し合いは平行線のまま『この話はもう終わりだ』と社長室を追い出されてしまった。


「なかなか強情だね、緋奈星さんって」

「…なんでアナタまでついて来るんですか」

行きのエレベーター同様
帰りもなぜか鮎沢さんが乗り込んできて
また庫内に2人きりの気まずい時間を共有。

《《社長》》の下で仕事するなら
ここにいる必要はないんじゃないのかな…。

「あ、それよりさ。
 ココの社長さんって秘書はつけない主義?」

「え…?」

「普通これだけの規模の会社なら
 社長秘書がいて当然だと思うんだけど…
 1度も見掛けないから、いないのかな?と思って。」

「えっと…それは…」

突然振られた秘書(燈冴くん)の話題にタジタジ。
でも鮎沢さんは彼を知らない風な口振りで
そんなに深く追究してくる様子もなく
表情からも、あくまで純粋に疑問に思っただけのように感じる。

燈冴くんの存在をまるで知らない…?
それならそれで良かったとは思うけど
つまり父は話していないって事、だよね。

だとしたら・・・どうしてなんだろ。

「わたしには…わかりかねます。
 いくら父娘でも
 社長としての考えは本人にしかわからないので…」

この返事は
彼の質問に対しても、わたしの疑問に対しても同じ意味を持つ。

< 142 / 232 >

この作品をシェア

pagetop