無彩色なキミに恋をして。
わたしの思いなんてそう簡単に父に伝わるはずもなく、話し合いは平行線のまま『この話はもう終わりだ』と社長室を追い出されてしまった。
「なかなか強情だね、緋奈星さんって」
「…なんでアナタまでついて来るんですか」
行きのエレベーター同様
帰りもなぜか鮎沢さんが乗り込んできて
また庫内に2人きりの気まずい時間を共有。
《《社長》》の下で仕事するなら
ここにいる必要はないんじゃないのかな…。
「あ、それよりさ。
ココの社長さんって秘書はつけない主義?」
「え…?」
「普通これだけの規模の会社なら
社長秘書がいて当然だと思うんだけど…
1度も見掛けないから、いないのかな?と思って。」
「えっと…それは…」
突然振られた秘書の話題にタジタジ。
でも鮎沢さんは彼を知らない風な口振りで
そんなに深く追究してくる様子もなく
表情からも、あくまで純粋に疑問に思っただけのように感じる。
燈冴くんの存在をまるで知らない…?
それならそれで良かったとは思うけど
つまり父は話していないって事、だよね。
だとしたら・・・どうしてなんだろ。
「わたしには…わかりかねます。
いくら父娘でも
社長としての考えは本人にしかわからないので…」
この返事は
彼の質問に対しても、わたしの疑問に対しても同じ意味を持つ。