無彩色なキミに恋をして。
scene⑤:私にはアナタが必要なんです。
朝の迎えから、日中の職場
そして夕方の送りと
最近、鮎沢さんとはどこかしらで必ず会う。
本当、まるで燈冴くんの代わりみたいに…――――
―――
――
「あれ?
今朝もお父さんいないの…?」
いつもと同じ朝、食事をとるために席についたけど
父の座る場所が空席なのが気になってお手伝いさんに訊ねてみた。
「はい…
最近ほとんどお帰りになっていないようでして…」
「そう…」
確かにここ2週間近くその席に父の姿を見掛けなくなった。
夜もわたしが起きてる時間帯はいなかったから
何時に帰ってきているんだろうとは疑問に思っていたけれど
まさか帰宅自体していなかったなんて…
「私達も心配しています。
旦那様が何日も家を空ける事なんて今までなかったですし
忙しいときは真白様が教えてくださっていたので…」
準備をしてくれているお手伝いさん達の暗い表情から彼女達もまた、とても不安そう。
燈冴くんがいない間はハウスキーパーさんが代わりに何かと準備をしてくれているけれど、”秘書”の代わりにはならないから理由までは話していないんだと思う。
彼がいなくなってから
順調だった歯車が少しずつ狂い始めている気がする。
鮎沢さんとの婚約の話も、父の不在も
何かが悪い方向へ動いていってる。