無彩色なキミに恋をして。

あとはハウスキーパーさんに任せてもいっか。

父の部屋の扉が閉まったのを横目で確認しながら
わたしも自分の部屋に戻った。

普段、わたしがお風呂に入る時間はだいたい21時頃。
この日、いつもより遅くなったわたしは今からのため準備をしていた。

遅い時間という事もあって
外はもちろん、家の中も静まり返っている。
だから、小さな音でも案外部屋まで届く。

廊下の方から聞こえた
”ガシャン”という、何かが落ちて割れる物音。

気のせい?

そう思ったのも束の間。


『旦那様!?』


今度は明らかに焦ったハウスキーパーさんの叫び声。


「お父さん…?」

嫌な予感が頭を過り
準備していた部屋着をベッドに投げ捨て
わたしは慌てて廊下へと飛び出すと
ノックする事もなく父の部屋に飛び込んだ。

「え…」

そこで見た光景に、足が竦む―――

「お…とう、さん…?」

床に倒れて動かない、青白い顔色の父。

倒れた拍子からなのか、そのより前なのか
額からは割れたガラスの破片が当たって出血していて、その横でハウスキーパーさんも必死に呼び起こそうとしていた。

「お嬢様!旦那様がッ!!」

わたしに向ける彼女の叫びに気が付いているけれど
どうすればいいのか頭の中が真っ白で立ちすくむ足が動かない。







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