無彩色なキミに恋をして。
さっきまで、人の心配を迷惑そうにしていた父が
どうしてこんな…
「救急車…呼ばないと…」
震える声でポツリと呟くと
腰を抜かしていたハウスキーパーさんが先に動いた。
「私が電話をしてきます!
お嬢様は旦那様をお願いします!」
普段、冷静に仕事をしている彼女だけれど
その一歩は早くて、階段を駆け下りて消えていく。
「お父さん…」
なんとか重たい足を動かして床に倒れる父の横に膝をつき
震える手で体を揺する。
このまま目を覚まさないんじゃないかって
ただ、怖くて。
頭に浮かんだのは、母の顔。
連れて行かないでほしい
わたしを独りにしないで
そればかりを祈り続けた。
遠くから聞こえてくる救急車の音。
クリスマスの夜と同じように
窓の外は、しとしと…と雪が降り始めていた―――――
―――――
―――
「過労…ですね。
随分と疲労していたようなので
すぐには目を覚まさないと思います」
父が救急病院に運ばれて処置をしてもらっている間に日付が変わり、深夜遅く医師に呼ばれて症状を教えてもらった。
「そう…ですか。
もう大丈夫なんでしょうか…」
「そうですね。
しばらくは休養が必要なので
入院して点滴等で様子を見た方が良いかと思います」
そう伝えられ『ありがとうございました』と頭を下げて医師と別れた。