無彩色なキミに恋をして。

こういうのは相手にしないのが1番。
直感的にそう感じ
『すみません。急いでいますので失礼します』と頭を下げて歩き出したのに、男は構わずわたしの後をついてきた。

「そんな事を仰らず
 せめて1枚だけ…」

言ってる傍から”パシャリ”とシャッターボタンを押していて、あまりの失礼さに腹が立ってしまい思わず足を止めてしまった。

「やめてください!
 許可はしていないはずですよねッ!?」

ムッとなって言い返してしまったものの
男には一切通用せず
それどころか相手はニヤリと口元を緩め
”罠にかかった”と言わんばかりにレンズを向け
その手を止めようとしない。

「いいじゃないですか、減るもんじゃあるまいし。会場(むこう)は人が多すぎて近くで撮影出来なかったんですから。
 それに…今日のお嬢様は《《撮られるための》》モデルでしょう?」

「ッ!?」

調子に乗ったのか
レンズ越しに失礼な言葉を浴びせてくる。

「”脱げ”なんて事は言いませんよ。
 そのままでも十分すぎるくらいの被写体だ。
 まぁ…強いて言えば
 ドレスの隙間から《《生足》》見せて欲しいですね。
 それと胸とジュエリーも協調させるようなポーズも。」

『やっぱり素材が良いな』とブツブツ言いながら
いろんな角度から撮影を続ける男。



わたしは…
その場から動けなくなってしまった。
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