無彩色なキミに恋をして。
そして燈冴くんもまた…
「へぇ…婚約者ですか」
完全に信じてないのか動じていない様子で嘲笑して見せている。
この2人…相当、相性は最悪なんだと思う。
そのわりに妙に似ているし
S極とN極の反発する磁石みたい。
「緋奈星さま?
我々はそろそろご自宅へと帰りましょうか」
「え…」
「いえ、緋奈星さん。
社長のいない今、社内の対応に追われます。
僕と会社に戻りましょう」
「え、え…」
それぞれに手を差し出され交互に顔を見てしまう
その一方で2人の睨みは続いている。
確かに会社の対応は最優先事項だと思うけど
自宅で連絡を待っているハウスキーパーさん達にも父の事を直接伝えたい。
でも今1番に優先したいのは…
「ふ、2人はそれぞれ会社と自宅に行って!
わたしは病室に戻るから…」
今この状態から逃げ出す事だった。
どちらにも指示をすると
2人とも少し驚いた表情でわたしを見ていたけれど
指示のまま意見を変える事はせず、わたしは2人に背を向けた。
こんな展開になったこと
そしてこれからのこと
父と、ちゃんと話をする必要があると思ったから。
燈冴くんと鮎沢さんを放置し
振り返る事なく、わたしは病室へと足を進めた―――――
残った2人がどうしたかは…
わたしにはわからない。