無彩色なキミに恋をして。

車寄せに停めたところでわたしは先に降り
燈冴くんと別れたあと
セキュリティゲートに社員証をかざしてエレベーターへと進んだ。

ちょうどそのタイミングで見掛けたのは
鮎沢さん、ただ1人。

今日は社長は一緒じゃないんだ…

遠目だからか向こうも気付かなかったので、わたしもあえて声を掛ける事はせずそのままエレベーターに乗り込んでしまったけれど…
彼の浮かない表情が頭の片隅に残る。
ここ最近、見る度ずっと暗いから。

しかし、その理由と繋がるものが
わたしにもすぐ近くまで迫っていた。


事態は深刻だったんだ―――――


父の復帰が明日と迫る中
鮎沢社長の動向は度を超えていて
社内規程までも変えるような内容の掲示が張り出された。


「こんなの…聞いてない。
 絶対におかしい」

今まで黙って様子を見ていたけれど
買収を(おびや)かすところまで来ると、もう許せない。
父に対して完全に裏切り行為だ。

ムカついたわたしは
社員達が注目している張り紙を無造作に破り取って
その紙を持ったまま社長室へと足を速めた――――

社長室の前に着いた時には
すでに中には鮎沢社長がいるみたいで
扉に近付くと彼達の声が聞こえてきた。

『それはどういう事ですか!?』

大声に近い迫力で最初に耳にしたのは
鮎沢芹斗さんの声。






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