無彩色なキミに恋をして。
出来れば普通に起こしてもらいたい。
もう何度もそう言っているのに
彼曰く『何度起こしても起きないのであれば、強行突破しかありません』だそう。
「それに何より
こうした方が緋奈星さま、すぐ起きるでしょ?」
わたしじゃなくたって
男からこんな事されたら起きるでしょ。
それどころか本来なら殴られる案件よ。
「もうわかったから退いてよ。
傍から見たら寝込み襲っているだけにしか見えないからね」
「俺はそれでも構わないですよ?」
「わたしは嫌です」
『それは残念…』と彼は心底ガッカリした様子で
肩を落としながら、ようやくわたしの上から離れてくれた。
「改めて。
おはようございます、緋奈星さま」
まるで何事もなかったかのように
執事らしく丁寧に爽やかな笑顔を向けるこの人とは
なんだかんだ言いながらも、もう8年の仲。
わたし事【漣 緋奈星】は
毎朝執事に起こされてはいるけれど
現在21歳の、まさかの社会人。
燈冴くんがわたしの執事になった経緯は
色々と複雑な事情もあったりなかったりで…
まぁザックリ言えば
日本有するハイジュエリーブランド
”Ripple Crown”の代表取締役社長兼CEOであるわたしの父親の秘書をしながら、執事も兼任している凄い人。
住み込みで働いているから
完全に家族みたいな関係。