無彩色なキミに恋をして。
「何もしていない…と?」
男の返答に納得いっていない事は
声色の変わりでハッキリ示している。
「カメラを持ったままこんな人気のない所まで追いかけてきて、何もしていないと?
お嬢様は怯えているのに
それでも尚、何も…と?」
協調する言い回しが怖い。
責められて逃げるに逃げれなくなった男は狼狽え始め。
「しゃ、写真を撮っていただけなんです!
あまりにお美しいので、つい…」
「《《つい》》、なんです?
ご本人に許可は?
盗撮ではないと言うのです?
本当に写真《《だけ》》が目的ですか?
まぁ、それも立派な犯罪。
まさか…強制わいせつ、或いは強姦しようなどとは考えていないでしょうね」
相手の答える隙など与えない威圧的な態度に
男はゴクリと息を呑み、わたしも唖然とするばかり。
この人を敵にまわしたら
精神的に地味に追い込まれるかもしれない… お
「そのカメラをこちらに渡しなさい。
フィルムを回収させて頂きます」
「えッ!?そ、それだけはッ」
「あなたに拒否権はない。
さぁ、早く」
男にとってカメラは商売道具なんだろう。
この状況でも手渡したくないらしく
グッと抱き抱えて放さないところを見ると
その躊躇いが最後の抵抗に思えてくる。
しかしそれも到着した警備員により
あっさり取り上げられてしまった。