無彩色なキミに恋をして。

あまり彼の事を知らないけれど
そこまで感情的になったところを聞いた事がなかったから、声を張るほどの何かがあったのは間違いなさそう。

話を聞かなきゃ

そう思って開けようとドアノブに手を掛けると
わたしはまた別の声を聞いた。


『株を全て買い占める』


それは耳を疑うような信じられない言葉ーーー


鮎沢社長(あの人)は何を言っているの?
買い占めるって…どういう事?


勢いよく入ろうと意気込んでいたのに
鮎沢社長の一言の衝撃が大きすぎて回す手がゆっくりになってしまう。

開けた瞬間ソファに腰掛けていた燈冴くんと鮎沢芹斗さんが驚いた顔でわたしの方を注目するなか、社長だけは一切こちらを見ようとしなかった。

でも今のわたしは止められなくて。

遠慮もせずに社長の隣にズカズカと近付いて
見えないところでグッと拳を握りながら声を発した。

「さっきの話はどういう意味でしょうか」

睨みつけてしまったんだ、敵を。


「漣社長の御息女様ともありながら
 ノックもなしにいきなり失礼なのでは?」

フっと鼻で笑いながら出されたお茶を飲む社長には
“まずい事を聞かれてしまった”なんて微塵も思っていない言い方だ。

「お答えください。
 この会社を…買収するおつもりですか!?」

「緋奈星さまッ!」


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