無彩色なキミに恋をして。

慌てて止めに入る燈冴くんの焦った顔に
いま自分がとんでもない事を言ってるって認識させられる。

わかってる。
わかってるからストレートに聞く事に意味があるの。

「さっき鮎沢社長が仰っていた事は”株の買い占め”
 それってつまり、ウチの会社を…
 父の会社を買収するって事ですよね?」

再度聞き直しても社長はピクリとも動揺せず
目を閉じお茶を堪能しているとさえ思える表情を浮かべていて
それすらわたしには腹が立った。

「何か言ったら――」

「そうだとしても。
 貴女に何か不都合でも?」

言い掛けるわたしの言葉なんて完全に無視。
この人にとっては
わたしは《《ただの》》社長の娘でしかなかったのだから。

「これは大人の話ですよ。
 何も知らない御息女さまが口を挟む事ではありませんね」

「そ、そんなッ」

「話は以上です。
 詳細はまたわかり次第お伝えしますので
 では、失礼する。お茶をごちそうさま」

まだ何1つ聞いていないのにこのまま終わらせるなんて、冗談じゃないと思った。

「待ってください!
 ちゃんと今説明してくださいッ!」

「緋奈星さまッ」

燈冴くんがまた制止しようと立ち上がり
わたしの腕を掴もうとしたけれど
そんな事に構わずわたしは社長の前に飛び出した。

「お父さんを…
 漣社長を裏切るんですか!?」

必死だったんだ。

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