無彩色なキミに恋をして。

「あなたを信じていたはずなんですッ!
 それなのにどうしてこんな惨いことをッ」

半分泣きそうになるのを堪えながら
わたしは社長の両腕を掴んで必死に訴えかけた。
それなのに全然手応えがなく
それどころか目を細めて睨みつけるように見下されてしまった。

もう何を言っても無駄。

そう感じたのは間違いなかったんだ…

「活発なのは構わないが
 これは我々《《大人》》の領域です。
 貴女はビジネスの話まで踏み込んではならない。
 わかったらその手を放しなさい」

耳に突き刺さるような言霊と
冷ややかに鋭い眼差しで見下ろすその瞳に
催眠術にあったみたいに体が動かなくなって
掴んでいた手の力も抜けていく。

「漣社長の教育は
 素晴らしいものだな」

馬鹿にしたように溜め息交じりも嫌味を言うから
その場から動けなくてても
顔を上げて睨みつけながら声を絞り出した。

「お父さんの事を悪く言わないで。
 あなたに…そんな権限はない!」

「これだから子供は困る」

チッと今度は舌打ちしながら
『失礼』と社長室を出て行ってしまう鮎沢社長の後ろ姿に、話はまだ終わってないって止めに入ろうと動こうとした。

それなのに急に視界がスーッとぼやけていくのを感じて、気が遠くなっていく…

「緋奈星さまッ」

倒れそうになったんだと思う。



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