無彩色なキミに恋をして。

すかさず抱えてくれた燈冴くんのおかげで免れたみたいで、彼の心配そうな必死な表情だけが目に入る。

「わたし…、、わたし…」

緊張から解き放たれたからなのか
止めどなく溢れる涙に嗚咽が出る。

「もう大丈夫ですから…
 何も言わなくて、いいから…」

ギュッと抱きしめてくれる彼の腕の中で
止まる事のない涙を流し続けた。

「すみません…僕の父親が…」

鮎沢さんはそう一言だけ呟いて
社長のあとを追う足音だけが耳に入る。



違うのに…
彼のせいじゃないのに
悪い方にばっか進んでる気がするーーー


「緋奈星さま、大丈夫ですか?」

「うん…平気…」

医務室に運んで貰いベッドに腰掛けると
燈冴くんから受けとったお水を数口、喉に流し込んだ。

興奮していたせいで頭に血が昇ったのかな。
目の前がクラっとしたけれど今は気分が落ち着いて
眩暈みたいなものも気にならなくなった。

「私がついていながらすみません…」

「ううん、わたしが勝手に飛び出しただけだから。
 燈冴くんは止めようとしてたのに…ごめん」

ベッド横に立って頭を下げる燈冴くんに
アタシも据わったままだけど一緒に謝罪した。

「でも…許せなかった。
 あんなこと言われて黙っていられなかった」

「緋奈星さま…」

鮎沢社長が言った言葉を思い出すと
涙が上がってくる。







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