無彩色なキミに恋をして。
燈冴くん、父がいない間の仕事が立て込んでるから
送ってもらうのはさすがに遠慮してわたしはここ数日1人で帰っているけど
こういうあいにくの天気に見舞われると
こんな時なのにな、って気分がまた下がる。
雨が嫌いなわけじゃない。
だけど、気分が落ち込む出来事がある時は
いつも雨が降っているから…
「明日は晴れてほしいな…」
窓に寄り掛かり
しとしと雫が当たるのを眺めながら
わたしは1人、家路に着いた。
知らなかったんだ。
わたし以外にも雨の冷たさに傷が癒えない人物がいた事を――――
その夜
雨は帰ってくる時よりも強くなっていて
室内でもカーディガン1枚だと肌寒く感じる。
今晩は降り続けるんだろうな…
部屋のカーテンを閉めようと窓へと手を伸ばすと
窓の外、玄関の正面門の横に人影が見えた…気がした。
「…誰かいる?」
夜の暗さと雨のせいで
誰がどんな格好でいるかまでは窓からほとんど見えないけれど
人の影があるようにだけは目視出来た。
人…であればいいけれど。
「やめよ、怖い怖い」
見えちゃいけない《《何か》》だったら怖いし
ホンモノの人間であったら不審者の意味でもっと怖くて、わたしは何も見なかった事にしカーテンを全て閉めた。