無彩色なキミに恋をして。
深々と頭を下げて謝る彼の声は
雨音にかき消されそうなくらい微弱だった。
「信じてもらえないかもしれないけど
ここまで酷く進んでいた事は知らなかった。
だから止めようと思ったのに…僕には無力だったんだ…」
頭を下げたまま絞り出すように枯れた声で訴える鮎沢さんの言葉に、わたしはすぐに彼が自分の父親を言っているんだって気が付いた。
止めようとしていただなんて…
「頭を上げてください。
これはあなたのせいじゃない。
親子だからってご自身が責任を感じる必要はないんですよ?」
「だけどッ」
バッと頭を上げ
辛そうな表情でわたしを見ながら彼は訴える。
「キミが必死に父を止めようとしたのにッ
僕の父親のせいで緋奈星さんも漣社長も…」
「それは…」
言葉に詰まり目を逸らしてしまった。
もちろん彼のせいではないけれど
わたし自身だってどうしたらいいのか
答えなんて何も見つかってない…
「あんな風に感情的に言い返すキミを見て
どれほど自分の父親を大事にしているかわかったんだ。
だからこのまま潰しちゃいけないって…」
「鮎沢さん…」
「ごめん…本当に…
今はまだあの人を止める術が…わからない。
だけどなんとかしてみせるから」
また深く頭を下げる鮎沢さんに
わたしは慰めの言葉も、責める事さえ出来ない。