無彩色なキミに恋をして。
相手が燈冴くんだったのが運の尽きだったのかも。
カメラから取り出されたフィルムを手にし
彼は男に向かって嘲笑う。
「あなたみたいな野郎が“モノ”に出来るなど
勘違いも甚だしい。
ましてや商売に使うなど以ての外。
ふざけるなって話だ。
彼女は渡しませんよ、絶対に。」
魔王が降臨でもしたのか
なかなかの迫力にこっちまで息を呑む。
警備員に両腕を掴まれた男は
落ち込んだ様子で俯いたまま
カメラを返して貰える事なく
外へと追放されてしまった。
そしてその後のわたしはと言うと―――――
「どうして誰にも何も言わず
勝手に独りで出て行ったんですか!!
心配するじゃありませんか!!」
こっ酷く怒られてしまった。
「いや…あの、お手洗いに行っていただけで…」
正直に『飲食し過ぎて気持ち悪くなってしまった』だなんて言ったら、また何を言われるか…
「どうせ食べすぎか、或いは飲みすぎて気分を悪くしたんでしょう?」
ば、バレてた…
顔はニコニコしているのに薄目で怖い。
透視能力か読心術のスキルでもあったんだろうか。
それもそれで怖いけども。
意表を突かれたわたしが返答に困っていると
彼は『はぁ…』と溜め息を零して言う。
「本当に心配したんですから」
眉を下げ
どことなく悲しそう。