無彩色なキミに恋をして。
「何をしているんですか!?」
リビングの扉が開いたかと思えば
わたし達の姿を見つけた燈冴くんが声を荒げた。
よりによって鮎沢さんと手を取って見つめ合うような場面を見られてしまい、言い訳の仕様がない。
「なぜ貴方がここにいるんですか!
今すぐ緋奈星さまから離れてください!」
わたしの腕を掴む彼の手を燈冴くんは勢いよく払うように叩き、離れた隙にわたしを後ろへと下げながら、壁になるよう鮎沢さんとの間を遮った。
「燈冴くん待ってッ
鮎沢さんがここにいるのには理由があって
あとで説明するから先に彼を―――」
「どんな理由があろうが
申し訳ないですが関係ありません。
この方を今すぐ追い出します」
鋭く刺さるように睨む目つきに突き放す言い方。
止めようとするわたしの言葉なんて最後まで聞かない感情的な燈冴くんからは、苛立っているのが凄く伝わってくる。
「仕えているお嬢様の話も聞かないとは
随分と優秀な執事ですね」
嫌味なんて言える余裕ないはずなのに
矛先を向けられた鮎沢さん自身もまた
顔を上げて睨み返すように燈冴くんに牙を向くから
火に油を注ぐだけ。
「言いたい事はそれだけですか。
満足したならお引き取りください」
リビングの扉を開け放し『どうぞ』と帰りを促す燈冴くんに、鮎沢さんはもう何も文句言わない。