無彩色なキミに恋をして。
ここまで走って駆け付けてくれたくらいだから
いなくなったとわかったときの様子が目に浮かぶ。
「本当にごめんなさい。
勝手に会場から離れてしまって…」
「まったくです。
急にいなくなったので焦りましたよ。
私か社長、ホテルの女性スタッフにでも声を掛ければ良かったのに。」
「確かに…。
以後気を付けます…」
“お手洗いくらい”なんて軽く考えて
警備員の目もすり抜けてきたんだもん。
そりゃ怒られて当然よね。
「ところで…
先ほどの方から何かされましたか?」
やっぱりお手洗いにジュエリーを持ち出したのがマズかったのか、腕を組む燈冴くんの表情は険しい。
「平気。ジュエリーは無事だよ。
盗まれるのは阻止出来たし
触れられる事すら―――」
「そうじゃなくて。」
ピシャリと遮った彼は
眉間に皺を寄せ明らかに怒っている。
「え…違うの?」
ジュエリーの心配をしているんだと思っていたけれど
そうじゃない?
「俺が心配しているのは
緋奈星さま御自身についてです」
「わたし…?」
「あの男に手を出されなかったのか
本当に写真《《だけ》》だけだったのか
そこを聞いているんです」
『わかってます?』なんて念押しするから
すぐさま首を数回縦に振った。
わたしに何かあれば
父が黙っていないのはわかるから。